宿物語|里と海の「あわい」の土地で(文・聞き手|簑田理香)

里と海が出会う、わたしたちの土地、大洗は、
いのちが生まれ、いのちが息吹をふきかえす「あわい」の土地です。

海と陸、人と自然、俗世界と神の領域、此岸と彼岸…。
それらの「間」を意味するものして、あわいという言葉は、古来より使われています。

大洗は「あわい」の土地。
沖合で、北から流れ来る親潮と南から流れ来る黒潮が出会います。
岩礁や砂浜で、太平洋から寄せる波と常世の国の大地が出会います。
鳥居が立つ神磯では、日常と聖なる領域が隣り合わせで、そこにあります。
海と空が出会う水平線には、朝に夕に光の祝福が満ちています。

海洋生物学者、レイチェル・カーソンは、その著書を通して
水が巡る「あわい」の場所は、
太古の昔から生命が生まれる大切な環境であることを、
わたしたちに伝えてくれています。
そして、すべての生命は海に還っていくけれども、
生命はまた、姿かたちを変えてこの世界を巡っていくのだということも。

里と海が出会う、わたしたちの土地、大洗では、
わたしたちの体のどこかにある魂の置き場に、
岩に弾かれて踊る波の音が、地球のいのちの息吹として、満ちてきます。

いくつもの「あわい」が重なりあう大洗は、人と自然の感性が交歓する土地。
その風土世界の物語を読み解いていきましょう。